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さかえやに来て、人生が変わった

 

小学校5年生の時、担任の先生が急に怒鳴りだしたり、教室から出ていってしまう人で、恐怖心をいただいたのが最初でした。そのため、先生がやっているなら自分たちもやっていいという考えが広がり、人をたたいたり、悪口を言うようになりました。私は毎日学校に行きたくないと思っていましたが、両親から毎日いかないと内申書に悪く書かれてしまうと言われ、いやいやながら通い切りました。誰から何をされても黙って我慢して、一人で耐えて過ごしました。卒業式の日に思ったことは、「やっと先生から解放される」ということだけでした。

中学校では、ソフトボール部に入部しましたが、一人の子の態度が悪く、良く怒られていました。そのうちに、その子は唯一怒らない私にしか話さないようになり、周りの子たちも、自分たちでは話を聞かないからということで、私を通して注意しようということになりました。それだけでもストレスでしたが、練習時間のほとんどをその子とチームメイトとの間を取り持つことだけに使っていき、練習に集中できなくなっていきました。結局その子とチームメイトとの板挟みに合い、その子に強く注意することもチームメイトに私へ文句を言うことをやめてほしいともいうことも怖く、黙って退部しました。本当はもっと話せばよかったのかもしれませんが、黙り込んで頼られないようにすることが一番良い方法だと考えるようになりました。

高校に入り合唱部に入部しました。合唱部ということが理由で、文化祭の合唱発表の練習担当になりました。ところが、クラスでは練習時間なのに声をかけても無視され、クラスのみんなは問題集をやっていました。ただ担任の先生がいる時は、みんな練習をしました。その頃、合唱部で持ち出し禁止のキーボードを、担任の先生が練習に持ってきてしまいました。私はそれを説明しましたが、担任は聞いてくれませんでした。それが原因で合唱部の先輩から怒られました。

合唱発表の当日も今まで私たちを無視した子達から「今日はがんばろう」と言われ、担任も一緒になって盛り上がっていたので、練習も全くしてこなかったのに気味が悪く感じました。そして案の定最下位でした。当日だけ張り切ることが正しくて、私のように練習を積み重ねることが間違っているんだとすら感じ、価値観が違いすぎるこの人達と、あと9カ月も一緒にいなければいけないのかと考えたら、気が重くなり、次の日から教室で食べ物や飲み物を口にすることをしなくなりました。その後、保健室登校にさせてもらいましたが、担任が毎日来て、「早く戻れ」と言ってきて、身も心も限界になり、1年休学後、結局退学しました。

18歳くらいになり、少し元気になってきたので、アルバイトを始めました。11時から15時の短い時間でいいからということで、3年程続けることができました。しかし、店長に誘われたお出かけの時に体調を崩してしまい、店長の娘さんの車を汚してしまいました。これがきっかけで、私は「もう来なくていい」「顔も見たくない」と言われ辞めさせられました。私は半狂乱になり、起きている間は自分を責めるか自分を傷つけることしかしなくなっていきました。再び体調は悪化し、夜眠れるようになるまで3年かかりました。しかも、働こうにも、家族以外の人が怖くて、家から出ない日々を2年過ごしました。

そんな時に、知人を通じてさかえやを紹介してもらいました。私のような病気の人への理解があること、高校卒業の資格が取れるフリースクールがあること、不登校や引きこもりだった子を何人も治した実績があることを教えてもらいました。

さかえやに来てからは、昼はたくさんのお部屋や広いお風呂の掃除、夜はお布団敷きとたくさんの洗い物の片づけと、くたくたになるほど仕事をしました。その為、薬を飲む前から眠くなり、寝つきが良くなりました。仕事はとにかくやらなければ終わらないので、自分を自分を責める時間も無くなっていきました。何もかも初挑戦で分からないことだらけだった私に、さかえやの皆さんはやり方をやさしく教えてくださったり、失敗しても次にどう失敗しないようにするかを一緒に考えて下さりました。

今まで失敗しなくても怒鳴られていた私は、このことに驚きました。失敗することは悪いことではないと知ることができて、心がとても楽になりました。

薬に頼らずとも、ぐっすり眠れて、悩む時間が減って、誰からも怒鳴られない日々をさかえやで過ごしたからか、処方されていた薬が、5種類から2種類に減りました。薬が減ったことでここなら大丈夫だと思い、フリースクールへの入学と就労研修をやることを決めました。くたくたに疲れる仕事の合間に、フリースクールの課題もやらなければいけない毎日でとても大変です。けれど、さかえやの皆さんも課された課題や自分で作った課題に挑戦しているので、自分だけじゃないんだと励まされます。そして、がんばっている人をみんなが助けてくれたり、応援してくださいます。直接言ってくれる人もいれば、ハガキにメッセージを書いて渡してくださる人もいます。私は両親と祖母以外から応援されたことがなかったので、応援してもらえると力が湧いてくるということをさかえやに来て初めて知りました。

そして、こんな私をここまで元気にしてくれた皆さんのようになりたいと思い、いろいろなことに挑戦しました。毎日ハガキを書く課題はもう1年を超しました。苦手な計算をしなければいけないマネージメントゲーム研修では、たくさんの人に助けられて何とか最後までやり切りました。CL(建設的な生き方)研修では、一緒に受けた人達のおかげで、最終日までがんばれました。夏祭りも一緒にやった4人のおかげで、怖かった人前に出て物を売ることができました。社長の講演のスピーチも怖いながらもなんとか人前でのスピーチ発表をやり遂げました。

さかえやに来て1年でたくさんことを経験しましたが、これらは全て私一人では絶対にクリアできなかったことばかりです。クリアできたのは、さかえやの皆さんのおかげです。

これだけやって思ったのは、今まで私は一人でやろうとしていたから失敗ばかりになっていたんだと気づきました。そしてさかえやに来る前から、両親をはじめ、たくさんの人に助けられ、支えられていたことにも気づきました。少しの不運に気を取られ、たくさんもらっていた愛情や幸せを見ないようにしていたから、私はここまで追い詰められたんだとやっとわかりました。見ないようにしていた幸せをしっかり見て、与えられていた愛情を少しずつ返せる人になろう。そして、今度は私が誰かに与えることができる人になろうと思いました。

自分しか見えていなかった私がここまで考え方を変えることができ、これからは思うだけではなく、少しずつでもできることを見つけて実行して、さかえやの皆さんのように苦しんでいる人に手をさしのべられる人になっていきたいと心から思います。

“失敗は悪いことではない”

小林 未来


  • 【プロフィール】
    • 山梨県甲斐市出身
    • 平成30年度さかえやフリースクール入学
    • 座右の銘: 百里を行くものは九十里を半ばとす
    • 趣味: 絵を描くこと